現代のマーケティングは、単に商品やサービスを宣伝するだけではなく、消費者の心理を深く理解し、それに基づいて効果的な戦略を立てることが求められています。その中で、行動心理学の知見を活用することは、消費者の購買行動や意思決定プロセスをより正確に捉え、効果的なマーケティングを行うための鍵となります。
本記事では、その中でも「アンカリング効果」という心理的な現象に焦点を当て、その定義やマーケティングへの応用、そして注意点について詳しく解説します。マーケティング担当者やビジネスオーナーはもちろん、日常の購買行動においてこの効果に影響を受けている消費者の皆様にも、ぜひとも知っておいていただきたい内容となっています。

アンカリング効果とは?

人は一番最初に見た数字が強く印象に残り、その後の意思決定を行う際、最初に見た数字に大きく影響を受ける傾向にあります。これを「アンカリング効果」といいます。
アンカリング効果の言葉の由来は、錨(アンカー)を降ろした船は、海底に沈んだ錨を基点に船が繋がれた範囲内でしか動けなくなる例えから、最初に見た印象の強かった数字がその後の判断に影響を与えるてしまうというたとえです。

アンカリング効果のWebマーケティングへの応用

Webの世界においても、よくこのアンカリング効果を狙ったマーケティング方法が使われています。

たとえば、ホームページでこのような表示を見かけませんか?

システムキッチン 通常価格 500,000円 が 今なら50%OFF の 特別価格 250,000円
システムキッチン 250,000円とするより、
「通常価格 500,000円 → 特別価格 250,000円」と表示することで、最初に提示した通常価格500,000円という情報がアンカーとなり、500,000円円という価格に対して 50%も値引きされているという判断がなされ、よい買い物ができたぞと思わせる事ができます。これが、アンカリング効果です。

アンカリング効果を使う際の注意点

アンカリング効果を使ったマーケティングは、上記のように価格の比較には効果を発揮しますが「二重価格表示」にならないよう注意して下さい。
「二重価格表示」とは、通常価格を本来の価格よりも引き上げて、あたかも値引きされたかのように表記することです。

例えば、「通常価格50万」というのがそもそも虚偽で、普段から25万円で売っている商品なのにもかかわらず、「通常50万円のところ、今だと 50%OFF の25万円」というように表示することを言います。

消費者は間違った情報をつかまされて間違った判断に誘導され、不当な価格の商品を買わされた状態になってしまいます。

このような事から、二重価格表示をすると、景品表示法違反になります。
消費者庁のページに二重表示価格の詳細が載っていますので参考にしてみましょう。

アンカリング効果を狙って、通常価格を高くみせかけて売りたい場合、同じ店舗内で通常価格での販売実績が一定期間必要となります。

おわりに

アンカリング効果は、マーケティング戦略の中で非常に効果的な手法として知られています。消費者の意思決定に影響を与えるこの効果を上手く活用することで、商品やサービスの価値を強調し、成約率を向上させることが期待できます。しかし、その際には、法律や規制を遵守し、消費者を誤解させるような表示や行為を避けることが重要です。正しい知識と戦略を持ち、アンカリング効果を適切に活用することで、ビジネスの成功に寄与することができるでしょう。